いよいよ後期授業がスタートしました。残念ながら、まだ全面対面授業とはならず、対面とオンラインのハイブリッド授業です。
教養教育の後期授業の目玉は、「教養セミナー」という授業です。「教養セミナー」は、少人数のグループに分れて、グループ内で同じ新書を読み、お互いに議論しアドバイスしながら、各自が書評を仕上げるという授業です。学生の基本的な読む力、書く力を向上させようという授業です。近年若者が本を読まなくなってきていると言われますが、学生たちの仕上げる書評は優れたもので、毎年『優秀書評集』が発行されています。三重大学図書館で探してみてください。
間もなく『DUNE デューン』(2021)という映画が公開になると盛んに宣伝されています。この映画の原作は、フランク・ハーバートの同名の小説(1965)で、SF小説に最初にエコロジーの概念を持ち込んだものと言われています。この小説は、欧米では熱心なファンがいることで有名です。そして何といってもこの小説の道具立ては、『スター・ウォーズ』(1977)にかなり似ていますし、『風の谷のナウシカ』(1984)にもいくつか似ているところがあります。
この小説は、すでに1984年にデヴィッド・リンチ監督によって一度映画化されています。あまり評判は良くなかったのですが、敵役のハルコネン男爵の甥を、英国のロックバンド ポリスのスティングが演じたことで有名でした。この小説を映像化したいという思いを多くの人が抱くようで、その後もTVドラマ化や別の監督が映画化しようとしたドキュメンタリーなどもあります。フランスの本当に周囲に何もない宿で、その宿に来る途中で車が壊れ、そこまで25km歩いてきたというカップルに会いました。彼らはなんと『DUNE』の自主製作映画を作ってる人たちでした。そのころ既にデヴィッド・リンチ版の『DUNE』は公開されていたのですが、彼らによるとハリウッド映画なんて駄目だということでした。したがって、自分たちの手で映像化したいということでした。その後彼らの映画が完成したのかどうかは、残念ながら知りません。
2021年版の『DUNE 』の監督は、ドゥニ・ヴィルヌーヴという人で、僕の最初の院長ブログに出てくる『ブレードランナー2049』(2017)の監督でもあります。『ブレードランナー』の原作は、P.K.ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(1968)です。P.K.ディックは、僕の最も好きな小説家です。米国には、保守的な一面があり、SF小説は文学的評価も低く、原稿料も安いという傾向があります。P.K.ディックは生涯(1982年死亡)を通じて、年収の半分以上を海外から得ていたということです(ポール ウィリアムズ『フィリップ・K・ディックの世界』(2017))。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が最初に映画化されたのは、1982年でリドリー・スコット監督によってです。このリドリー・スコット監督の家では、一時(13年間)日本人女性をハウスキーパとして雇っていました。彼女のエッセイ、高尾慶子『イギリス人はおかしい』(2001)もなかなか面白いです。
似ていると言えば手塚治虫『ジャングル大帝』とディズニー『ライオンキング』はそっくりですが、大人の事情があると思われます。ちなみに写真は、ホワイトライオンではなくホワイトタイガーです。