NHKの朝の番組で、コロナ禍の中家庭で過ごす人のために、家族で楽しめる映像作品として『Lost in Space』を紹介していた。「未知の惑星に不時着してしまったロビンソン一家が・・・」と紹介されていた。あれっ?これって子供の頃に好きだったTVドラマ『宇宙家族ロビンソン』じゃないのかと思い、インターネットで調べてみると、案の定1965年のドラマのリメイク作品だった。このTVドラマの原題も『Lost in Space』であった。
未知の場所、漂着、ロビンソンから連想されるように、この作品は『ロビンソン・クルーソー』が、元ネタである。『宇宙家族ロビンソン』に出てくるロボットの名前がフライデーで、これも『ロビンソン・クルーソー』にちなんでいる。ただ、ロボットがこの名前なのは日本版だけで原版では、単にロボットと呼ばれていたらしい。
ずいぶん昔に『私は、ロビンソン・クルーソー』というタイトルで、卒業論文を書いてもらったことがある。就職面接で、卒業論文のタイトルを言うのが恥ずかしかったと、当時の学生は言っていた。人間1人が健康に生きていくために、どのような作物をどれだけつくればいいのか?そのためにはどれくらいの農地が必要なのか?また煮炊きに必要なエネルギーを得るためには、どのくらいの森林が必要なのか?などを考察してもらったものだ。
現在我々の研究室は生態系サービスという、いわば自然の恵みについて研究している。当時は、自然の恵みとして、食べ物やエネルギーなど比較的目に見えやすいものにしか注目していなかった。自然はその他にも、空気や水を奇麗にしてくれたり、災害を防いでくれたり、我々の心を癒してくれたりする。これらの目に見えにくい自然の恵みをきっちり評価して、開発とのバランスをとって、人間の持続的な発展のために役立とうというのが、現在の我々の研究室の目標である。興味を持ってもらえると、大変うれしい。
『宇宙家族ロビンソン』に出てくるロボットのフライデーは、SF映画の金字塔的作品『禁断の惑星(Forbidden Planet)』(1956)に登場するロビー・ザ・ロボットとよく似ている。というかデザイナーが同じで、後のSF作品のロボットの原型となっている。この作品は、ロボットだけではなく後々のSF映画全体に大きな影響を与えていて、スターウォーズを見ても、スタートレックを見ても、「ああ、ここね」という点が随所にみられる。『禁断の惑星』は、シェイクスピアの最後の戯曲と言われいている『テンペスト』(おそらく1610-1611年)を緩くベースにした作品で、今回この文を書くために検索してみたら、菊地善太『The TempestからForbidden Planetへ』日本大学大学院総合社会情報研究科紀要 No.7, 399-407 (2006)という論文もありました。
実は、この映画をもとにした『禁断の惑星への帰還(Return to the Forbidden Planet)』というロックミュージカルもある。僕の大好きな作品で、音楽は60年代70年代のロックミュージックが中心、全員が楽器を演奏しながら踊り歌うという斬新な構成で、客席もノリノリの大変楽しい作品である。1989年と1900年両方で、その年に上演された優れた演劇・オペラに与えられる賞であり、イギリスで最も権威があるとされているローレンス・オリヴィエ賞のMusical of the Yearを受賞している(ミス・サイゴンに勝っている)。この作品は、なぜかは知らないが、欧米で学校ミュージカルとして上演されることがよくあるようで、YouTubeで検索すると予告編がいっぱい出てくる(残念ながら、大抵演者は演奏してないけど)。
ちなみに写真の宇宙船みたいなのは、奈良県の室生山上公園芸術の森のオブジェである。とてもいいところなので、コロナ禍が終わったらぜひ行ってみてください。