8月には終戦記念日がありました。前に三重大学記念日の話を書くときに、新制三重大学は連合軍占領下の学制改革で生まれたと書きましたが、戦争と大学の間には、大きな関係があると言われています。フランスのグランゼコールはフランス革命後に、近代大学のモデルと言われているベルリン大学もナポレオン軍との衝突後に誕生し、アメリカでも独立戦争後に多くの州立大学が生まれ、さらに南北戦争中から戦後にかけて多くの大学が誕生したようです。
もちろん第2次世界大戦も大学に大きな影響を与えています。アメリカでは、ルーズベルト大統領の下で、GIビルという復員軍人のための法律ができました。GIビルによると復員軍人は最低1年から4年の教育を受ける権利があり、授業料などに加えて生活費も支給されました。この法律は、復員兵の失業を防ぐことを目的としていたようですが、多くの若者が大学に通うようになり、このために万人のための大学という考え方が出てきたようです(中山茂『大学とアメリカ社会』朝日選書)。
『我等の生涯の最良の年』(1946)は、戦後すぐに制作されかつ公開されたアメリカ映画で、アメリカの復員軍人を描いたものです。アカデミー賞9部門を受賞し、名作と言われています。この映画の中の復員軍人は誰も大学には行きませんが、復員軍人の就職の難しさはよく描かれています。戦後すぐの映画なのに、日本人へのフェアな評価(日本人は家族を大事にする。もっともこの例として出てくるのが、死んだ日本兵が持っていた家族の寄せ書きがある日の丸(映画の登場人物がお土産として持ち帰ったもの)なのはビックリでしたが)や、原爆に対する割と否定的な態度は好感が持てるものです。この映画を見ると幸せな気分になれるという評価も多いのですが、時代もあってやや男性目線のファンタジー的な部分もあります。女性が見るとどうなのでしょう?
GIビル後の万人のための大学という理念に基づいて、多くのアメリカの大学では夏休み期間中にサマースクールが開講されます。社会に開かれた大学を目指したものなので、老若男女様々な受講生を受け入れています。ですので、Web上でサマースクールを検索するとものすごく多くのサマースクールプログラムを見つけることができます。
このサマースクールの理念に基づいて、三重大学の教養教育院でも夏休み中に教養教育カレッジが開催されています。現役の三重大生が受講したら正式な単位になり、他の大学の学生も、一般社会人も高校生も受講することができます。高校生が受講してくれた場合、その後三重大学に入学してくれれば、三重大学の正式な単位にもなります。まさに社会に開かれた大学を目指したプログラムです。授業を担当していただいている先生がたは、現在のところ三重大学の名誉教授の先生がたです。豊富な知識を持った先生がたの授業をぜひ受けてみてください。本年度はもう終了しており、コロナ禍のために残念ながらすべてオンラインの授業でした。
今後もますます大学が社会に開かれ溶け合って、全体として一つの良好な地域を構成するようになるといいなあと思います。
ちなみに写真は、イサム・ノグチ設計の「全体をひとつの彫刻作品とする」というコンセプトの下に作られたモレエ沼公園です。