レオナルド・ダ・ヴィンチは、1519年に亡くなったので、2019年が没後500年にあたるそうです。それを記念して2019年から2020年にかけて、ルーブル美術館で、ダ・ヴィンチ没後500年記念特別展が開催されました。その展覧会を真夜中に撮影した映画が、2021年元旦から公開されるというニュースを見ました。
日本でも、東京富士美術館で、東京造形大学のレオナルド・ダ・ヴィンチ再現プロジェクト、ダ・ヴィンチ没後500年「夢の実現」展が開催されていました(11月29日まで)。
そのダ・ヴィンチ・プロジェクトを指導した東京造形大学教授の池上英洋氏の書いた『レオナルド・ダ・ヴィンチ』ちくまプリマー新書(2020)を読みました。
この本には、「万能の天才」ダ・ヴィンチ(ダ・ヴィンチ村のレオナルドなので、この本では終始レオナルドと書いてありますが)の芸術家以外の部分も詳しく書いてあり、大変面白く読みました。実はこの本を読む前に、ロジャー・D・マスターズ『ダ・ヴィンチとマキアヴェッリ―幻のフィレンツェ海港化計画―』朝日選書(2000)を読んでいました。恥ずかしながら、まずダ・ヴィンチとマキアヴェッリって、同時代の人だったの?というのが驚きでした。この2人が同時にフィレンツェにいて、面識があったというのは、すごいことです。マスターズの本は、副題からも判るようにダ・ヴィンチとマキアヴェッリが力を合わせてアルノ川の改修工事を行って、フィレンツェを海港化しようという計画が中心テーマです。この本では、ダ・ヴィンチの技術者的な側面に焦点が当たっています。ただ、ダ・ヴィンチとマキアヴェッリの話が1章おきに出てくる構成なので、今一つダ・ヴィンチの生涯というか、なぜ今それに取り組むのか?というのが判りにくいという欠点があります。池上の本でもアルノ川改修計画について触れており、こちらは大変すっきりと読むことができます。絵画や手稿も、沢山載っています。僕もトリノとミラノで、結構高い入場料を払って、ダ・ヴィンチの手稿の現物を見ました(現存する約5000ページの手稿は、各地に分散して存在するらしいです)。有名な鏡文字を眺めて、ものすごく感動したかと言えばそうでもありませんでした。そもそも説明がイタリア語しかなかった気もします(不確かな記憶ですが)。池上の本では、ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチコード』(2003)でおどろおどろしく出てくる鏡文字の秘密が、あっさり説明してあって、痛快です。その他、日本語で手軽に読めるお薦めのレオナルド・ダ・ヴィンチ本も紹介しています。なんとそれだけで30冊にもなるので、ダ・ヴィンチ人気がよくわかります。前述のルーブルの特別展入場者数も世界記録だそうです。
『ダ・ヴィンチコード』は大ベストセラーになりましたが、僕も大好きで、一度通常の本で読んでから、作中に登場する美術作品や建築物、場所、象徴などが載っているヴィジュアル愛蔵版も買ってしまいました。2006年には映画化もされていて、一時はパリを訪れる外国人観光客がみんな『ダ・ヴィンチコード』を持って歩いていると言われていました。軽薄かもしれませんが、、彼らの気持ちはよくわかります。間違いも多々あり、神を冒涜しているという批判もありますが、ほら話として読めば楽しいので、未読の人にはお薦めです。
ちなみに写真は、アルノ川とフィレンツェの街並みです。