近頃、テレビのリアリティ番組への批判が生まれている。このリアリティ番組への批判から生まれたのが、スーザン・コリンズの小説『ハンガー・ゲーム』(2008)である。究極のリアリティ番組として、参加者の殺し合いをテレビ中継するという話だ。この小説は、米国では、ヤングアダルトと呼ばれるカテゴリーに属している。英語圏においては児童文学と文学一般の間に、ヤングアダルト(YA)という文学カテゴリーがある。およそ10代後半から20代前半の思春期から成人後間もない読者層を想定している文学カテゴリーだ。現在欧米では、最も売れる文学カテゴリーとされている。ライムスター宇多丸のラジオ番組『米カルチャーを語るときマストな「YA小説」の世界を知ろう』もhttps://www.tbsradio.jp/266627にアップされている。大学生の諸君にはぴったりの文学カテゴリーと思われる。僕がこの小説を読んだときは、すでにおっさんの年齢であった。読みやすい英語の小説を探していたので、アメリカでヤングアダルト小説で大ヒットという惹句にひかれて、原語で読んだ。それ以降、小説は『ハンガー・ゲーム3』まで書かれている。しかし、何といってもこの小説の映画化が大ヒットしており、映画『ハンガー・ゲーム』(2012)から『ハンガー・ゲーム4』(2015)まで作られている。米国では、ハリーポッター並みの人気らしく、ドバイには『ハンガー・ゲーム』のテーマパークもできているらしい。
ジョージ・R・R・マーティンの『ゲーム・オブ・スローンズ』(1996)もゲームというタイトルがつく小説として有名である。ただ、米国の有名有料テレビチャンネルで2011年から2019年まで放送されていたテレビドラマシリーズとしての方がはるかに有名である。これをいつ読んだか覚えていないが、すでにHBO(アメリカ有料テレビチャンネル)でドラマ化決定と本の帯に書いてあった記憶がある。僕は1冊目しか読んでいないが、現在でも小説のシリーズは続いているようである。面白いが、エロさとグロさが結構強く、あまり趣味がいい小説とは言えない。僕としては、『ハンガー・ゲーム』の方を推薦したい。
だけど僕が本当にお勧めしたいのはオースン・スコット・カードの『エンダーのゲーム』(1987)だ。ネタバレになるけど、子供の頃からゲームの天才として訓練されていた子供が、いつの間にかゲームをプレーしていると思っていたのに実際の戦争を指揮していたという話だ。話のオチは、今書いたことなんだが、この小説の良さは少年の成長物語部分だと思う。中高学生くらいに読んだと思っていたが、出版年を見るとYAの年代を過ぎた年齢で読んだようだ。実はさらにおっさんになってからも、原語で読みなおしてみたがやっぱり感動した。最初に読んだハヤカワ文庫SFのあとがきに映画化されると書いてあったが、ようやく2013年に映画化された。この映画は見ていないのだが、評判は良くないようだ。
僕たちの世代だと、大ベストセラー(750万部)だったシドニィ・シェルダン『ゲームの達人』(1982)も思い出される。登録商標になっているらしいが、超訳という翻訳方法が話題だった。残念ながら読んだことはない。これはアメリカでも日本でもテレビドラマになったようだ。
また秋冬は狩猟シーズンでもある。ゲームには、狩猟の獲物という意味もある。一般にはゲームのフランス語であるジビエとしての方が有名である。シカやイノシシをはじめ、野ウサギ、山鳩、クマなどはみんなゲームである。秋冬の自然の恵みであるゲームの肉をぜひ食べてください。
ちなみに写真は、僕の自慢のすべて石でできたゲーム盤(ソリティア)である。