あけましておめでとうございます。2021年の新年をお迎えして、なにかありがたいお話でもしたいと思い、巡礼路の話をすることにしました。
三重県にある有名な巡礼路と言うと、世界遺産・熊野古道です。熊野古道には、いくつかのコースがありますが、主に三重県を通るのは伊勢路と呼ばれる伊勢神宮から熊野速玉神社までの道です。熊野三山が和歌山県にあることもあって、熊野古道と言うと和歌山側がポピュラーです。旅行記を読むのが好きなので、伊勢路を歩いた旅行記を探していましたが、なかなか出会うことができないでいました。福元ひろこ『歩く旅の本 伊勢→熊野』東洋出版、2013は、数少ない伊勢路を歩いた旅行記です。伊勢路イラストマップ探検隊作成のとても分かりやすい地図も収録されていて、伊勢路を歩こうと思われる方には、大変お薦めです。ただ、この本の最後の方には、和歌山県側の熊野古道・中辺路を歩いた旅行記も載っていて、僕にはなんとなくそちらの方が楽しそうに感じられます。
この本によると、福元さんが熊野古道を歩くきっかけになったのが、スペイン版巡礼路「サンチャゴ・デ・コンポステーラへの道」を歩いたことだったそうです。世界遺産になっている巡礼路は、熊野古道と「サンチャゴ・デ・コンポステーラへの道」の2つです。
昨年(2020年)、NHKで『聖なる巡礼路を行く~カミーノ・デ・サンティアゴ 1500km~』という番組が放送されました。コロナ禍の前までは、一大ブームとなっていたようで、映像には巡礼路を歩く数多くの人が映っていました。その番組の中で、パウロ・コエーリョ『星の巡礼』角川文庫、1998を読んだのが、この道を歩くきっかけになったと言っている人がいたので、この本を読んでみることにしました。最初は、原作(ポルトガル語)の英訳『The Pilgrimage』1992を読み始めましたが、よく意味が分からなくて、翻訳本も買いました。作者の神秘体験が豊富に書かれていて、作者が何かを象徴的に語っているのか、事実を語っているのかが判断できず、難しく感じていたのです。エピローグで作者は、私に起こったすべてのことを本に書くと言っているので、事実なのでしょう。ポルトガル語の原題も『魔法使いの日記』です。僕にキリスト教的な素養があまりないのが問題かもしれせんが、少なくとも徒歩旅行の旅行記としての楽しみは、わずかしかないと言っていいでしょう。
徒歩旅行の旅行記としては、ビル・ブライソン『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験―北米アパラチア自然歩道を行く』中央公論新社 2000は、最高に面白くて感動した記憶があります。これはアメリカ3大トレイルの1つ約3500kmのアパラチアン・トレイルを歩いた旅行記です。この本も映画化されていて、ロバート・レッドフォードが主演・製作で2016年に『ロング・トレイル』として公開されています。また今ではネット上に、河戸良佑『暑くて臭くて底抜けに笑う アパラチアン・トレイル』とか、加藤則芳『アパラチアン・トレイル3500kmの旅』などがあって、写真も満載で楽しく徒歩旅行を疑似体験できます。
三重県を伊勢まで走る伊勢自動車道は、現代の巡礼路だと考えられます。そこで僕達は委員会を作って、伊勢神宮まで○kmという看板を10kmおきに立てることを決めました。今度伊勢自動車道を通るときには注目してみてください。その看板のおかげで、多少巡礼路らしさを感じられると思います。
ちなみに写真は、「サンチャゴ・デ・コンポステーラへの道」で世界遺産登録されているフランス・コンクのサント=フォワ修道院です。