三重大学の1年生全員が必修で履修するスタートアップPBLセミナーでは、PBLに基づいたプロジェクト活動に取り組むことで、三重大学のディプロマポリシーについて知り、大学での学習方法やスキルなどを体験的に学習することを目指しています。プロジェクトは、SDGsに関連するテーマから選択することになっています。ただ昨年度と本年度に関しては、コロナ禍にあることから、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って新たに生じたり、注目されるようになったりした問題を取り上げることにしています。
SDGsのターゲットのほとんどは、直接的にも間接的にも、生態系と深く関係しています。よく知られているようにSDGsが達成されるための達成目標年は、2030年です。しかし、少し前までは生態系に直接的に関係する目標に関しては、達成目標年は2020年でした。
大学生の皆さんが小学生であったであろう2010年に、名古屋で「生物の多様性に関する条約」の第10回締約国会議(COP10)が開催されたのを覚えているでしょうか?この時に愛知目標が採択され、その達成目標年が2020年でした。SDGsのターゲットのうち、直接的に生態系に関するものの大部分は、愛知目標があてられています。そのため達成目標年が2020年になっていました。すでに2020年が過ぎていますが、なんと20の個別目標のうち達成は「ゼロ」でした。新しい目標の達成目標年はSDGsと同じ2030年で、その内容は中国で開催されるCOP15で決まる予定ですが、コロナ禍のため、まだ開催されていません。
生物多様性を守るための最もわかりやすい方法の一つが、絶滅の恐れのある種を守ることです。この地域で今の時期にお目にかかれる絶滅の恐れのある種として、チュウサギ(準絶滅危惧)がいます。白いサギは、3種類いてコサギ、チュウサギ、ダイサギです。まさに大きさが、小、中、大なのですが、この時期に営巣して子供を産みます。いま、東名阪自動車道を通ると蟹江インターチェンジと弥富インターチェンジに沢山のサギが営巣しています。サギたちが営巣する場所が減少してしまったために、このような場所で営巣しているのです。道路を走りながら見るのは危ないので、できればインターで高速道路から降りて、どこかに車を止めてから、双眼鏡で覗いて見てください。ヒナの様子も観察できます。他にも、アオサギ、アマサギ、ゴイサギを観察することができます。高速道路会社と野鳥の会愛知県支部の方々が協力して、保全に取り組んでくれています。興味のある人は、野鳥の会愛知県支部に連絡をしてみてください、野鳥の会で月に1回調査(5月から8月まで)を行っていますので、これに参加すれば、サギについての知識や、安全な観察場所も教えてもらえます。NHKの『ダーウィンが来た』でも放送されていますが、なにせ5000羽ものサギがいるので、近所には糞などで迷惑に感じる方々もいます。難しい問題です。また、チュウサギは渡り鳥で、春から夏にかけて日本で卵を産んでヒナが生まれますが、秋から冬にかけて東南アジアに渡っていきます。このような渡りをする鳥を保全しようとすると、日本の生息地も守る必要がありますし、渡っていった先の生息地も守る必要があります。これもなかなか難しい問題です。
もう少し暑くなってくると、サギソウも咲いてきます。まさに白いサギが飛んでいるようなきれいな花が咲きます。こちらも準絶滅危惧種です。この地域で、ジメジメした湿った場所があれば見つかるかもしれませんが、決して違法採取しないでください。こちらも自生地が続々と減少しています。このまま2030年がやってくると、SDGsに関しても達成できたのは「ゼロ」でした、と、なりそうで心配です。
ちなみに写真は、ジャングルのようですがインターチェンジで営巣するサギです。