暑い日が続き、オリンピックも盛んです。夏休みもあって、映画『ピーターラビット2』(2021)が公開中ですので、ピーターラビットの話をすることにします。
今の学生諸君は、『ピーターラビット』に馴染みがあるのでしょうか?もう少し上の世代だと『ひらけ!ポンキッキ』や『ポンキッキーズ』でアニメが放映されていたので、お馴染みだったと思うのですが。『ピーターラビット』は、ビアトリクス・ポター原作の100年以上前に書かれた絵本です。
映画『ピーターラビット2』(2021)は、映画『ピーターラビット』(2018)が大ヒットした影響で製作された続編です。映画『ピーターラビット』の原作は、もちろんビアトリクス・ポターの絵本ということになっていますが、内容はほとんど原作を思い出させないドタバタコメディです。北米地域の様々な批評家による映画レビューをまとめた映画評論サイトRotten Tomatoesでは、「ビアトリクス・ポターの古典的キャラクターをカラフルで好ましい形で現代に蘇らせ、若い観客には楽しいかもしれないが、原作を愛する人たちを激怒させる危険性はかなりある」となっています。まあ映画の最初の方では違和感に苛まれますが、徐々に近年のCGの優秀さもあって、ウサギたちのモフモフぶりがかわいくてしょうがなくなります。
原作者のビアトリクス・ポターは、激動の人生を送った人で、ポターの伝記的映画『ミス・ポター』(2006)も感動ものです。ポターは印税を使って、景観が美しいことで有名な湖水地方のニア・ソーリー村のヒル・トップに農場を購入し、創作に専念します。自然保護に熱心で、多くの土地をナショナル・トラストに寄付し、全部で湖水地方の4000エーカー(約1600ha、東京ドーム350個くらい)以上の土地と15の農場、多くの建物をナショナル・トラストに寄付しています。
ボウネスには、『ビアトリクス・ポターの世界』という、ピーターラビットの博物館があって、俗っぽいと言えば俗っぽいのですが、ここのビアトリクス・ポターの生涯を紹介するビデオがなかなか泣けます。
湖水地方に行くと、パブリック・フットパスにもよく遭遇すると思います。パブリック・フットパスを歩いて英国の田園景観をぜひ楽しんで欲しいですが、なぜパブリックという名称がついているのかも一度考えて欲しいのです。英国に古くからある通行権や2000年に追加された散策権と、人間の福利厚生(human well-being)の関係(早い話が、単なる自然の中を歩く幸せですが)を実感してもらいたいのです。
CG動物モフモフ映画と言えば『パディントン』(2014)も有名です。これももちろんマイケル・ボンドの『くまのパディントン』が原作です。『ピーターラビット』に比べると、こちらの方が原作のイメージを守っています。したがってRotten Tomatoesでも、「愛される子供のキャラクターを、本質的な魅力を失うことなく21世紀に蘇らせた」となっています。この映画も好評だったようで、すでに『パディントン2』(2017)も公開されていますし、『パディントン3』の製作も決定しているようです。
ウサギの話と言えばリチャード・アダムス『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』評論社(1975)も大好きです。高校生の時に読んで、面白くて大感動しました。この前年にリチャード・バック『かもめのジョナサン』新潮社(1974)が、120万部の大ベストラーとなっていて、同じ動物ものということで比較されたりもしましたが、僕は『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』が段違いにお薦めです。
ちなみに写真は、ヒル・トップと湖水地方の景観です。