いろいろ議論の的になっているが、政府の「Go Toキャンペーン」が始まった。農業などの1次産業や製造業などの2次産業は、物価の安い国と競争するのが大変だというので、先進国では観光業が成長産業だと言われている。
実際スペインなどは、GDPの1割以上を観光業で稼いでおり、多くの先進諸国でも、GDPの3%から5%ほどを観光業で稼いでいる。日本における自動車製造業の平成30年のGDPが、全体の約3%ほどなので、それと比較しても大きい産業規模があるのがわかる。
ただ、日本では観光業はあまり中心的な産業とはみなされていなかったので、平成20年に観光庁ができるまでは、観光のGDPも計算されていない状況だった。
ともかく先進国では、特に主要産業のない田舎や地方都市では、観光業に力を入れるようになってきている。個人的には、田舎の景観が好きなので、田舎の観光業が栄えるといいなあと思っている。
田舎観光が盛んなのは、フランス・イタリア・ドイツである。欧州では、休暇が長いということもあって、比較的値段の安い田舎で休暇を過ごすというのは、定番である。田舎での夏のヴァカンスを描いたフランス映画は、ものすごく沢山ある。代表的なのは、『プロヴァンス物語 マルセルの夏』(1990)とか『プロヴァンス物語 マルセルのお城』(1990)で息をのむ美しさの田舎の景色が味わえる。
これらのヴァカンス映画を見ても、田舎でヴァカンスを過ごしているフランス人対象のアンケート結果を見ても、ヴァカンス中は田舎のきれいな空気の中でのんびり過ごしていることがわかる。特に何もしないのが普通である。
日本ではじまったころの農家民宿の正式名称は、「農林漁業体験民宿」といって、農業や漁業を体験してもらおうという主旨があった。僕が思うに、日本の休暇が短いところと、農業や漁業を体験しなきゃいけないところが、日本の田舎観光が今一つ栄えない理由である。
フランスで農家民宿に泊まると、宿泊者全員と宿の主人が一斉に食事をすることになる。宿の主人が「さあレタスサラダよ」と言うから、どんなものかと思うとレタスの葉っぱが入っているだけだ(たぶん何か所かで同じフレーズを聞いたから、これが定番だと思うけど)。でも採れたてて、実においしい。そら豆のゆでたての熱々を持ってきて、ざっと広げて、みんなで皮をむいて、各自バターを擦り付けて食べたりする。ワイン飲み放題で、19時から23時くらいまで、延々とみんなでしゃべって食べる、実に楽しい(と書くと、フランス語が堪能なように思われるが、実際は幼児以下なので、ひたすらニコニコして過ごす)。何泊か泊まると、これが毎晩続くことになる(朝はみんなゆっくり起きてくる)。こういう素朴というか単純な田舎での楽しみを、日本の農家民宿でも体験できるようなるといいなあと思っている。
一方、『おかえり、ブルゴーニュへ』(2017)は、ワイン畑を相続するためにブルゴーニュに戻って来る人の話である。ブドウの収穫期には、大勢の若者の住み込みのバイトを雇うことになる。たぶんこれも定番なんだと思うが、収穫が終わった日には、ワイン飲み放題でこの若者が大騒ぎする。これも実に楽しそうで、日本でも、こんな感じで収穫期に若者バイトを雇えないものかと考えてしまう。
ともかくみんな、田舎の景色を大事にして、田舎に行きましょう。
ちなみに写真は、ブルゴーニュのワイン畑である。