三密を避けて飲食店を営業するために、オープンカフェ形式の営業を後押しする地域が増えてきている。オープンカフェと言えば、欧州が本場である。例えば、パリのカフェでは、屋外のテラス席、屋内の席、カウンターの立ち飲みでコーヒーの値段が異なる。屋外のテラス席のコーヒーの値段が一番高い。これはなぜかと言えば、屋外のテラス席は、公共の道路の敷地を使用していることになるため、道路使用料を役所に支払わなければならないためである。
日本でオープンカフェが広まらない理由の一つがこれで、民間のお店が、公共の道路部分を使用して、利益を上げることに文句を言う人は多いであろう。公共の道路は、当然一般市民が公平に利用できるものでなくてはならなくて、特定の人に利益を与えるものであってはならないからである。
公共の道路を使用する許可を、道路占用許可という。例えば、電柱とか、ポストとか、電話ボックスとか、さらに公安委員会が設置した道路標識なども、道路占用許可を受けている。 従来は、今あげたような公共の利益に供するものにしか、道路占用許可は与えられなかった。パリでカフェに道路の占用許可が与えられているのは、オープンカフェに人々が集い街を眺め、街に賑わいが出ることで、街全体の人々に利益がある、すなわち公益性があると認識されているからである。
わが国でも、2004年に景観法が公布されて、「にぎわい・交流の創出のための道路占用許可の特例」として、オープンカフェによる道路利用が可能になってきている。お店が街に開かれ街と一体化すると、街の賑わいにつながってくるというのが狙いである。カフェが好きなので、これを契機にオープンカフェが広がってくると嬉しい。
カフェと同じように、コンサートホールが街に開かれているのが、ストリート・ミュージックである。アイルランドの首都ダブリンには、どういう理由かは知らないが、ストリート・ミュージシャンがいっぱいいる。僕が数十年前に一度だけアイルランドを訪れた時に最も衝撃を受けたのは、ともかくストリート・ミュージシャンとヒッチハイカーの多いことだった。
このダブリンのストリート・ミュージシャンを主人公にした『ONCE ダブリンの街角で』(2007)は、割と静かな映画だが、音楽の評価が高く第80回アカデミー賞の最優秀歌曲賞を受賞した。この映画をもとにしたミュージカルもあるようで、これは見たことがないのだが2012年トニー賞で、ミュージカル作品賞、ミュージカル主演男優賞、ミュージカル脚本賞を含む8部門で受賞したらしい。2013年、グラミー賞最優秀ミュージカル・シアター・アルバム賞も受賞している。是非見てみたいものである。
映画『ONCE ダブリンの街角で』の主人公は、やはりアイルランドのバンド映画『ザ・コミットメンツ』(1991)のギタリスト役を演じた人である。この『ザ・コミットメンツ』にも実はミュージカル版がある。こちらは映画は見ていないのだが、ミュージカル版を見た。アイルランドの貧しい若者が理想のソウルバンドを目指していく話で、最後はバンド演奏で、観客総立ちである。
三重大学のキャンパス内にある比較的新しい建物の1階部分は、建物の中での活動が見えるように造られている(僕が構想したわけじゃないけど)。これも大学での様々な活動をキャンパスに開いて、大学を活性化しようという狙いである。是非コロナ禍が終わったら、キャンパス内を散策してみてください(オープンカフェがあるといいんだけど)。
ちなみに写真は、近頃人気の"世界一の美食の街"と言われているスペインのサン・セバスチャンのオープンカフェである。