アクティブ・ラーニング
5月28日、29日、盛岡で国立大学教養教育実施組織会議が開催され、参加してきました。全国の国立大学の教養教育の代表者が集まって、情報交換をしたり、議論をしたりするものです。その全体のテーマが「教養教育におけるアクティブ・ラーニングについて」でした。「アクティブ・ラーニング」というのは、「学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修」(中央教育審議会『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて』平成24年) とされています。
その報告で印象に残ったのは、1年生全員がグループに分かれて被災地を訪問し、岩手県の復興に自らが何をすべきか、何ができるかを考えるという岩手大学の授業です。現地の人たちが毎日さまざまな決断や選択を迫られているのを認識したり、災害時には自ら行動を起こさなければならないことを肌身で感じたという報告でした。
三重大学でも従来から「スタートアップセミナー」でアクティブ・ラーニングを実践してきました。今年度からはそれが後期の「教養ワークショップ」につながっていきます。実は、私は今年「スタートアップセミナー」のある授業をほぼ毎週参観させてもらっています。午後の健康科学の実技のあとの時間帯のようで、後ろで見ていると、教員が説明している間は次々と意識を喪失していくのですが、3~4人のグループ活動になるとにわかに元気になって、仲間とわいわい議論をしたり、情報を検索したり、メモをとったりしています。
私自身、学生時代を振り返ると、感銘を受けて鮮明に記憶に残っている講義ももちろんありますが、結局本当に自分のものになっているのは、講義で刺激を受けて自分で勉強したもののような気がします。教員の役目としてはいかに学生を刺激して、アクティブに勉強してもらうかということなのでしょう。その意味ですべての授業がアクティブ・ラーニングを目指さなければなりません。
ところで、盛岡では会議のあと、宮沢賢治も愛した小岩井農場まで足を延ばしてみました。岩手山を背景にした美しい緑の牧場で羊たちがのんびり草を食んでいました。その様子にすっかり癒されましたが、彼らもそのうち牧羊犬がやってきて追いたてられる運命にあるようです。

三重大学 教養教育機構長
井口 靖
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