シェフィールドにて②:学生と市民(続き)
先回はシェフィールドに行って、学生と市民のことについて考えたことを書きました。今回はその続きで、厳密には日本に帰ってから考えたことです。
出張で九州大学に行って来ました。少し時間の余裕があったので、途中、西南学院大学に立ち寄って、博物館を見せていただきました。創始者の名前をとって「ドージャー記念館」と呼ばれる建物は明治の趣を残す素晴らしいものでした。ここを訪れる市民の姿もちらほら見られました。キリスト教関係の展示を見た後、すぐ横の食堂で昼食を取らせてもらうことにしました。生姜焼肉に揚げ出し豆腐がついた和定食が440円で、美味しくいただきました。春休みのせいもあって学生の姿は少なかったのですが、印象的だったのは年配のご夫婦や子供を連れた若いお母さんなどが自然に食事をしている様子でした。学生服姿の高校生もいました。
大学は市内の住宅街の中にあります。この食堂は門から入ったすぐの所にあり、おしゃれなカフェという感じです(写真)。入り口には「営業中」と書かれていて、学生は学生証を示すと3%引きだと書かれてありました。つまり、市民の利用を前提として作られ、運用されていることがわかります。カフェテリア方式なので最初はちょっと戸惑いますが、あちこちに必要な指示は書いてありましたし、給仕の方も親切でした。私が近くに住んでいたら毎日でもここでお昼をいただきたいところです。
西南学院大学を後にして、九州大学に向かいました。電車とバスを乗り継いで中心部から約1時間のところに広大なキャンパスがあります。近代的で大きな建物がいくつも建っていて、さすがスケールが違うと思い知らされます。ただ、社会から完全に隔離されていて、砦か修道院のような感じもしました。その方が集中して勉強できるのかもしれませんが、いずれ社会に出て行く学生たちはやはり市民とともに生活する方がいいような気がします。
本学は九州大学ほど孤立していませんが、市民の方が気軽に入ってくるという雰囲気でもありません。教養教育ではできるだけ授業を市民開放にするようにしています。まずは市民の方に授業に参加してもらうところから始めたいと思っているのです。熱心に授業を受け、食堂でご飯を食べて、図書館で勉強をする市民の姿があれば、それは学生に少なからず影響を及ぼすものと思います。学生たちは特に教養教育の授業は何のためにやるのかわからないと思っているふしがあります。でもわざわざ市民の方が授業に来られて、しかも一生懸命取り組んでいる姿を見るとその意義を感じてくれるのではないかとも思います。
市民の方の中には庭で作ったのでと野菜や花を持ってきてくださる方や、部屋に立ち寄られて世間話をして帰られる方もあります。私たちも社会から孤立しないですみます。

三重大学 教養教育機構長
井口 靖
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