グループ活動を通して学んでほしいこと
三重大学では、1年次前期にスタートアップセミナー、後期に教養ワークショップが必修となっています。いずれもグループ活動を取り入れています。これは学生が受け身でなく自ら学ぶこと、すなわち「アクティブ・ラーニング」の一環として行っているものです。一見、学生たちは生き生きとグループ活動をしているように見受けられます。しかし、中には「グループ活動で身につくものはない」「非協力的な人もいてうまくいかない」などの声もあります。グループ活動がむしろ弊害となる場合があるのかもしれません。
9月16日、教養教育機構では、シンポジウム「アクティブ・ラーニングとグローバル化を理念とした教養教育プログラム」を開催し、学内外から100名以上の参加がありました。聖心女子大学の杉原真晃先生が「アクティブ・ラーニングを通して育ってほしいもの―グローバル化する社会に生きるうえで―」という基調講演をしてくださいました。その中で、球技でも体力をつけるため走ることは必要だ、しかし、走るだけでは球技の上達はない、というたとえをされました。つまり、アクティブ・ラーニングの授業を進めるのはよいが、それ自体が目的化しては意味がない、それを通して何を学ぶかを忘れてはいけないということでしょう。シンポジウムの様子は次をご覧ください。
https://www.mie-u.ac.jp/topics/kohoblog/2016/09/2016-7.html
近頃、グループ活動などのアクティブ・ラーニングが重視されるあまり学習の内容や質が軽視されているのではないかとの批判もあるようです。
「グループ活動は、学習を促進するばかりでなく、抑制する方向に働く場合もある。たとえば、そこそこの労力でまあまあの結果を出すということがグループ内で暗黙の了解(暗黙的なルール)となってしまっているような場合だ。」(松下佳代・京都大学高等教育研究開発推進センター 編著『ディープ・アクティブラーニング』(2015年、勁草書房))
杉原先生はかつて幼稚園の先生もなさっていたそうです。講演でも「幼稚園ではすべてがアクティブ・ラーニングですから」とおっしゃっていました。もちろん、グループ活動を通してコミュニケーション力など社会で必要な力も身につけてほしいと思っていますが、大学の授業である以上、授業を通して学問的知識を獲得し、それを活用できるようになるべきでしょう。グループ活動でそれがより深まるようでなければ意味がありません。
最後に内輪の話で恐縮ですが、今回のシンポジウムは、ポスターの作製や掲示、会場の設営から片づけまで教養教育機構の教員、事務が総出で行いました。いわば私たちのグループ活動の成果でした。グループ活動自体はうまく行ったと思うのですが、内容あるものであったかどうかは参加者のご判断におまかせしたいと思います。おいでいただいた方には一同心より御礼申し上げます。

三重大学 教養教育機構長
井口 靖
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