気がついたら12月も残すところあと数日です。先日の忘年会の席上、「最近忙しいのですか、院長だより更新されていませんね」と指摘されてしまい、11月は教養教育カレッジの鼎談報告を取りまとめるのが精一杯だったと言い訳したのですが、いやはや自分の処理能力のなさを恥じました。以下の鼎談報告もお読みいただければ幸いです。
・教養教育カレッジ2019の受講生、授業担当教員と教養教育院長の鼎談 「生涯教育へのさらなる充実と拡大に向けて -教養教育カレッジ2019の経験から-」
さて、その忘年会の席上、語学の話題で盛り上がりました。語学は暗記と文法ということでそこにいた年寄り集団は一致したのですが、世の中は違った方向に進んでいます。このところ大学入試の英語民間試験活用の延期のことが取り沙汰されていますが、一方で2020年度から小学校英語が教科化されることについてはさほど話題になりません。
学生時代、小学生帰国子女の英語力保持クラスの担当を依頼され、2年ほど子供達に英語を教えていました。教えると言ってもゲームをしたり、他愛もない会話をしたりといった程度のことです。その際に実感したのが、子供達の英語運用力の低下の速度でした。小学校の低学年で帰国した子供達はあっという間に、高学年であっても英語運用力保持の為の特別な環境がない限り(例えば家庭で良質の英語使用環境が整えられている等)、これも驚くようなスピードで運用力は失われていきます。帰国すれば家庭外の言語使用環境もほぼ日本語ですから、週1回程度の英語力保持クラス程度では到底足りないのです。担当していた子供達の英語圏での滞在期間は短くて3年、もっと長い子供もいました。週日は現地校で学び、土曜日は日本語補習校に行くのが学校生活の典型的なパターンです。ある調査によれば、アメリカの小学校6年間の授業時間数は5,000時間程度ですので、例えば、滞在歴3年間で英語に接している時間数は、授業時間だけでも2,500時間です。これに授業外の学校滞在時間、学校外での様々な活動時間が加わります。そのような環境で英語を習得したとしても、英語を使う必要がない環境に置かれると、英語運用力はみるみるうちに失われていきます。
この後期に担当しているPBL言語学「小学校英語を科学する」では、小学校英語の教科化について、言語習得研究の知見に基づき、予測される効果について取り組んでいます。ちなみに、教科化後の授業時間数は、年間70単位時間(1単位時間=45分)です。教科化の対象となる5年生と6年生の2年間で合計140単位時間です。そもそも小学校の限られた授業時間の中で何を教えるべきなのか、帰国子女に英語を教えた経験に基づくと色々と考えさせられます。
さて、三重大学では、在学生や卒業生を対象にアンケート調査を行なっています。その調査の中で、実践外国語力について自己評価してもらっていますが、結果は惨憺たるもので、学内の会議の席上でも話題になります。とはいえ、前述の帰国子女のケース同様、日常的に外国語を使う必要がない環境に置かれていれば当然の結果でしょう。私の知る限り、在学中に高い外国語運用力を身につけた(数少ない)学生達には具体的な動機付けがあり、相応の努力をしていました。短時間で効率よく外国語を身につけるためには、繰り返しになりますが、やはりそのことばの仕組みを理解した上で、徹底的に暗記する、またその言語を使用する環境に積極的に身を置くしかないと個人的には思います。
教養教育院長に就任してから1年9ヶ月が過ぎようとしていますが、英語を使う機会がめっきり減ってしまい、すぐに単語が出てきません。しかし、考えてみると日本語も同様です。なんだ単なる老化現象か。
イギリスの小学校の参観日