11月12日(月)から11月16日(金)の間、教養教育院主催の公開講座「教養教育ウィーク −Refresh教養!!−」が開催されました。本年度で3回目となる公開講座ですが、昨年度よりも2講座多い計8講座を、文系理系取り混ぜた8名の講師陣が担当しました。初日の開講式で挨拶させていただきましたが、受講者の熱気と真剣さに圧倒されました。全ての講座で、受講生は教室の前の席から座ります。授業後の質疑応答も活発で、各講座が終わっても講師に直接質問します。幸運の女神には後ろ髪がない、と言われますが、走り去る前に前髪を掴んで離さないといった感じです。受講生と一緒に、8講座のうち7講座を聴講しましたが、いずれの講座も同様でした。また、受講生が真剣なので、教える側もそれに応じて真剣に用意してきます。まさしく真剣勝負です。そして、どの講座も素晴らしいものでした。かなり高度かつ濃い内容を時間内に受講者目線で講義する各講師に、とにかく圧倒されると同時に、このように素晴らしい教員が所属している部局の長を務めさせていただいていることを大変誇らしく思いました。成功の裏には、この公開講座を支えてくれた事務の協力もありました。夜遅くまでの資料作りや、会場設営、そして当日は受付を担当してくれました。受講生と教職員が一体となった夢のような一週間でした。
公開講座の取りを務めたのは、若手アメリカ文学研究者でした。カナダの作家マーガレット・アトウッド著『ハンドメード・テール/侍女の物語』を原作に製作されたアメリカのテレビドラマを題材にした内容でした。文学研究者なので本来であれば原作に基づいた講義をするのでしょうが、1回限りかつ市民向けの講座ということもあり、ドラマを題材として選んだのかもしれません。ドラマの内容の紹介は省きますが、原理主義宗教に基づく全体主義国家としての近未来アメリカを描いた内容はショッキングで、暴力シーンや性的な描写もあり、日本では通常のテレビ放送では難しいのではないかと思いました。ちなみにイギリスでは、公共放送で日曜日の夜9時から放映されたとのことです。同じ島国なのに文化や意識の差でしょうか。
さてその講座ですが、文学研究の分析手法を用いて、このかなり際どい内容のドラマをいかに理解するのかという内容でした。講義の組み立て、非常に分かりやすい解説もあって、あっという間の1時間半でした。また、司会者がたまたまイギリス文学研究者ということもあり、司会者とのやりとりも楽しめました。これをきっかけに原作を和訳で読み、さらに、原語の英語で読むと、映像とは異なった世界も見えてくるのではないかと思いました。ドラマの撮影スタッフはカメラワークを駆使して画像によってある事象を描きますが、作家はそれを書き言葉で描写します。対象となるのは同じ事象です。しかし、ドラマの画像と書き言葉による描写とでは、視覚刺激が無い分、書き言葉の方が受け手の解釈の幅は広がるように思います。それが、母語ではない英語だと尚更かもしれません。他の講座も含め、今回の公開講座が更なる知的探究のきっかけになればと心から願っています。
三重大学では、正規の授業の一部を市民向けに開放しています。さらに、科目等履修生として正規授業を履修して単位を取り、もっと学びたくなれば、学部や大学院に正規の学生として来ていただければと思います。様々な経歴や背景を持つ学生が学ぶオープンな大学になればと思います。そして正規の授業も真剣勝負になればいいなと。
ドラマの中で、眠っているうちに(何も声を上げないうちに)、こんな社会になってしまったといった内容のセリフがありました。「忖度」だの自主規制しているうちに、我々の望まない方向にどんどん進んでいってしまう世の中にならない為にも、大学の果たす役割は更に重要になると信じています。調子に乗って最後に余計なことを書いてしまいました。