教養教育はかつて「一般教育」と呼ばれており、どの科目を何単位履修するかは「大学設置基準」の中で定められていました。その授業を行うために「教養部」という組織が置かれた大学もありましたが、三重大学には教養部はなく、1983年に人文学部が創設される以前は全学の一般教育を担当する教員は教育学部に所属していました。人文学部ができてからは主として文系の一般教育の教員は人文学部に、理系の一般教育の教員は教育学部に所属し、両学部から関係教員が集まって「一般教育委員会」を作り、そこで一般教育の運営を行っていました。
いわゆる「設置基準の大綱化」により、一般教育の内容を自由に行うことができるようになり、三重大学では「共通教育」と呼ばれることになりました。一般教育担当教員もそれぞれの学部に分属し、各学部からさまざま分野を専門とする教員が出てきて多様な共通教育の授業を行うことができるようになりました。その運営を行うために1996年に「共通教育機構」が置かれ、国立大学の法人化を見据えて、2004年にはその機能を強化した「共通教育センター」が置かれました。
「共通教育センター」は理事(のちに副学長)がセンター長を務め、そこに各学部から教員が集まって、共通教育を企画し、運営してきました。そこではスタートアップセミナーなどの新しい授業の試みもなされ、今も外部から高い評価を受けているものもあります。ただ、運営の中心となる教員は各学部からその都度集まってやってきましたので、それぞれの学部の仕事もあり、共通教育だけに専念するというわけにはいきませんでした。また、社会の多様性に対応すべくカリキュラムの修正を続けた結果、教育を体系化できず、そのすべてを把握するのが困難になってきました。
2011 年5 月内田淳正学長より教養教育のための新しい組織構築について提案がなされ、これを受けて教養教育検討専門委員会、教養教育カリキュラム等検討委員会で検討がなされました。2014年4月には15名の専任教員から成る三重大学「教養教育機構」が発足し、「自律的・能動的学修力の育成」と「グローバル化に対応できる人材の育成」を理念とした新しい教養教育のカリキュラムが開始されました。2018年4月からは、「教養教育院」と名称を改め、上記2つの理念の元、教養養育の企画運営に専念できる学部相当の部局となりました。しかし、コロナ禍やそれを契機に一層促進されるデジタル情報化など、さらなる社会的なニーズに全学一体としてより組織的に取組むことが求められるようになりました。
2021年教育研究評議会の決定により、教養教育院は理事を機構長とする高等教育デザイン・推進機構の中に位置づけられる「全学共通教育センター」へと改組されました。新組織では教養教育の2つの基本理念を継承しつつ、専門教育(主専攻)に教養教育の副専攻を加えることで社会の多様性への対応を目指しています。