三重大学 教養教育機構 機構長だより
2016年4月 記事一覧

新書を読んで書評を書くという授業

本学の新しい教養教育カリキュラムは2年目に入りました。昨年度、全員必修の「教養ワークショップ」という授業を初めて実施し、無事終了しました。1年生約1300人が各自一つの書評を書き、その中から44篇を選んで優秀書評集を作成しました。

新書の中から各自一冊を選び、1か月程度で読みます。新書でも「論説文」を選ぶように言ってあり、例として百冊ほどのリストは示します。 きちんと読んできたことを確認するために、毎週、内容のメモである「読書シート」の提出を義務づけています。7回目の授業で最初と同じように、自分が読んだ新書を紹介して、グループとして読む本を決めます。グループで読む日程を決め、毎週要約を書いてきて、お互いに読み合い、議論します。そして、最後にはそれを基に各自が批評も加えて1600字から2000字の書評にまとめることになります。しかし、それで終わりではありません。お互いに書評を読み合って、いいところ、直した方がよいところを指摘し、書き直します。そうやって約1300の書評ができあがりました。

この授業のもうひとつの特徴は学生に相互評価をやってもらっているところです。グループ活動の相互評価の他に、できあがった一つの書評について別の班の学生3名が評価をします。つまり、その本を読んでいない学生が評価をするわけです。

実は、私は学生たちの書評の仕上がりが予想以上であることに驚いています。学生たちの評価も参考にしながら、各クラスから1つだけ担当教員が推薦して、書評集に収めることにしました。これは私たちにとってなかなか困難な仕事で、最後は教員の好みになってしまったかもしれません。掲載できなかったものの中にも素晴らしいものがたくさんありました。

「書評」であるためには、その本を推薦するにせよ、批判するにせよ、人にその本を読んでみようと思わせることを常に考える、つまり、読み手を意識して書くということが必要だろうと思います。そこが「感想文」との違いのひとつではないでしょうか。この訓練は他の科目のレポート、卒業論文、さらには、社会に出たときの報告書等にきっと役立つことと信じています。

1300
の中でも、44の優秀書評の中でも最もとりあげられている本が『友達地獄 -「空気を読む」世代のサバイバル』(土井隆義著、ちくま新書)でした。学生たちの書評を読んでいて、私も読まずにはいられなくなりました。書評集をさしあげたある方から「書評を読んで『若者はなぜ3年で辞めるのか? -年功序列が奪う日本の未来』(城繁幸著、光文社新書)を読みたくなりました」と言っていただきました。学生たちにとっても、そして私たちにとっても最大の賛辞でした。