1月も終わりに近づきつつあります。新年早々風邪をひいてしまい、治ったかと思ったら、今度はひどい胃腸風邪にまでかかってしまい気がついたら1月も中旬を過ぎていました。まったく散々な新しい年の幕開けでしたが、風邪をひくのもいいもので、日々の忙しさの中で忘れていたことに再度気付く機会となりました。世の中の殆どのことは、自分がいなくても回っていくことを改めて認識しました。回っていかないことがあれば、それは(今のところ)自分にしかできない仕事なのですが、かなり限定されます。そう思うと自由で解放された気持ちになり、何か新しいことを始めよう、その為にあれも読みたい、そうだ読み忘れていた論文があった、などと考えていたら風邪が治ってしまい、またもや雑用まみれの日常に戻ってしまいました。Ohimè...
さて、この院長だよりの中でも何度か話題にしてきた全学必修の「教養ワークショップ」ですが、学期が終わりに近づいています。新書を対象とした書評を書くのが最終目標で、12月の授業最終週に最初の原稿が提出されました。学生達はこの原稿に何度も手を入れ、学期末に最終版を提出します。書き直しの過程では、学生同士による評価・コメント、いわゆるピアレヴューをさせているのですが、人間関係に極端に敏感な昨今の学生気質のせいなのか、なかなか踏み込んだコメントをしてくれません。そこで、書評の一つ一つに教員がコメントをつけるようにしています。また、その時点での(少し辛口の)評価点も出します。学生からは面倒な教員だと思われていること間違いなしです。しかし自分にしかできないことはこれぐらいかなと思い、「嫌われる勇気」をもって今年もコメントしました。
書評を書く過程で読書記録をつけさせています。読書記録を取る際に重要と思われる内容については、なるべく表等にして論点整理をするように指導しています。もちろん漠然と指示するだけでは、具体的に何をしていいのか分からないと言われそうなので、練習問題を通して、また模範例を示して理解してもらえるように工夫しています。書かれた内容を整理するのには思考が伴い、それなりに時間がかかります。しかしその作業をすると新書の見取り図が出来上がり、要約が書きやすくなるばかりか、対象としている本の問題点(例えば論理的な破綻)も自ずと明らかになります。慣れてくると実際に書き出さなくても頭の中で論点整理ができるようになります。
OECDの学力調査にPISAというものがあり、毎回結果が発表されるたびに話題になります。昨年発表された結果によると日本の15歳人口の読解力が大幅に低下しているようです。コンピューター上で実施する多肢選択法のテスト形式であることからすると、おそらく、読み解くための力に関する限定的な調査結果でしょう。その結果について一喜一憂するのも問題だとは思いますが、入学してくる学生達の読解力を見る限り、何とかしないといけないと常に感じています。我々の「教養ワークショップ」で行なっている能動的な読解力を育成する教育、つまり論点整理をしつつ要約・批評を書く教育により、アカデミックな読解の為の基礎力が身につくと確信しています。ただし、毎回の課題を真面目にこなせばという条件付きです(どこまでも嫌味な奴やなあ、という学生の声が聞こえてきそうです)。
教養ワークショップの各クラスから選ばれた優秀書評は、『優秀書評集』として毎年冊子体にして配布しています。ご希望があれば郵送させていただきます。学生達の半年の成果をお読みいただければと思います。
2018年度「教養ワークショップ」優秀書評集