「単位パン」が全国の大学で試験期間中に販売されるようになって数年になります。三重大学も例外ではありません。学生達には人気のようで、単位修得はそれなりに(パンを買って食べるよりも?)難しいと思われているようです。単位修得の難易度はともかく、日米の大学生の授業外学修時間数の差に基づき、日本の大学生の勉強しないことが長い間問題視されてきました。特に1年次の学生の授業外学修時間数を比較すると日本の学生の方が短いようです。本学教養教育の授業外学修時間もとても短いことがアンケート結果から分かっています(科目によって差はあります)。なお、授業外学修時間数と授業の満足度は反比例する傾向にあるようです。
本学ではCAP制を導入しています。CAP制というのは一学期で履修できる単位数の上限を定めた制度のことです。そのため以前のように、月から金まで毎日5コマ、といった学生はいなくなりましたが、それでも1日4コマ履修している学生は多いようです。1日4コマ、つまり朝8時50分から夕方16時10分までぶっ通しで授業を受け、その後、部活やアルバイト等もある中で、どのようにして授業外学修時間を確保できるのだろうかとは思います。
一方、アメリカの大学ですが、卒業単位数だけ見ると日本の大学とほぼ同じです。ただし単位数が授業時間数と一致しています。1コマ3単位で、週3時間(実際には150分が多いようです)の授業時間です。これを週2回に分けて行うのが普通で、語学の場合には週3〜4回といった授業もあります。専門にもよりますが、週に5コマ、つまり1学期に15単位分履修するのが標準的です。1日あたりの授業時間数からすると、本学の1年生の半分です。しかし、各授業の課題は相当な量で、それにレポートが加わり、さらに2時間の期末試験があります。大学図書館は24時間開館です。図書館に課題用の指定図書が入っている授業があったりするので、課題に取り組んだり、レポートを書く学生で学期中は賑わっています。
本学では、語学や実習関連の授業は1単位です。教養教育にはこのような授業が多いので、自ずと1日あたりの授業時間数が多くなります。また、就職活動や卒業研究等の理由で、4年間、毎年ほぼ同じ単位数を履修することができず、どうしても低学年で多くの単位数を修得することになってしまいます。そのこともあって各授業担当者には、多くの課題を課すことに躊躇いがあるのかもしれません。
与えられた条件下でできることは何か。体系的なカリキュラムを構築し、各授業の到達目標を具体化・明確化するという当たり前のことを実現することのように思います。現在日本の大学が取り組みつつある科目のナンバリング(番号付与)もその一環です。アメリカ大学の科目にはレベルに応じた番号が振られています。1年生向けであれば100番代、2年生用は200番代といった具合です。さらに、積み上げ式ですので、若い番号の科目の単位を修得していなければ、次のレベルの科目を履修することができません。アメリカとは大学を取り巻く社会状況が異なるので、そのまま適用することはできないとしても、カリキュラム構築の原則として使うことはできるように思っています。そうすると、各科目の到達目標に応じた授業外学習の課題も自ずと決まリます。
三重大学の教養教育では、各科目のガイドラインを昨年度作成しました。来年度の履修案内に掲載する予定です。各科目の下には複数の授業が開講されています。異なった教員による授業である場合もあります。同じ科目名の授業ですので、ガイドラインに沿った内容にするというのがその趣旨です。少しづつではありますが、体系的なカリキュラム構築を目指したいと考えています。そのことが、ひいては授業外学修時間の増加にもつながるのではないかと願っています。